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これだ!と納得のいくデザインができた時は高揚感に包まれますが、すんなりうまくいくことは少ないものです。この時も新商品企画のデザインに悩んでいました。思考はループするばかりで、こうしてデザインの仕事をしているのは、二人の兄の影響かもしれないななどと思い出にふける始末です。 男ばかり三兄弟の末っ子である僕は、少し歳の離れた兄たちに憧れに似た気持ちを持っていました。兄の部屋にある本や音楽のCD、ポスターなど何もかもが新鮮で、兄が不在の時にコッソリ入って見たりしていたのを今でも覚えています。 特にすぐ上の兄は音楽が好きで、日本にヒップホップが最初に入ってきて盛り上がっていたのが直撃した世代。ヒップホップに関する資料がたくさん兄の部屋にはありました。中でも僕が影響を受けたのはアート系の分野でした。中学生の頃には、真似して英語の文字をソレらしく描いて、友人に褒められたこともありました。そのうちに、先輩がやっているイベントのフライヤーデザインや、ロゴデザインを頼まれて描くようになって、喜んでくれる人がたくさんいて、それが純粋に嬉しくってという繰り返しで、今があります。 そして現在の僕はデザイン部署に所属し、みなさんにお届けするクリスタルトロフィーを企画・デザインすることを主な仕事としているというわけです。トロフィーという枠に囚われないプロダクト作りも視野に入れているので、クリスタル製品の企画・デザインといった方が正確かもしれません。クリエイティブで楽しいこともありますが、今回のようにアイデアが出なくて困ることも多いです。 ただ、兄たちからの影響でデザインへの興味を見出したように、何かをする時に、人からの刺激を大切にしているという側面が僕にはあるような気がします。実は、今回の新商品企画でも「社長って自分の会社が好きなんだよね」という社長のつぶやきが刺激になりました。自分も「好き」からデザインに携わる仕事に就いたので、「自分の会社が好き」というフレーズに共感と興味が湧いたのです。新商品企画の糸口になりそうだなと引っかかったのですが、ここからが長い道のりでした。   ■迫る新商品企画会議に焦る日々 これだと思える案が浮かばないまま、日々の業務に追われ、新商品についての企画会議の日程が迫ってきていました。コーラを注いだグラスに水滴がびっしりついています。だいぶ考えごとをして時間を過ごしていたようです。「このガラスのコップも競合他社か」などとのんきに呟いている場合ではないと頭を振りました。 クリスタル製品はいわゆるガラス製品の1つです。ガラス製品の市場には、トロフィーに限らず、食器、照明、家具などかなり幅広い商品が出回っています。僕の仕事は、その中で、新しい価値をもったクリスタル商品を生み出すことなのです。でも、新しい価値を見出したコップでないことは確かです。いやコップでもいいのかもしれませんが、半世紀も前に徽章屋として創業してから、トロフィーや社章(会社バッジ)を取り扱っている会社として、やはり記念碑的なそれ自体に確かな意味をもたせたものを考え出したいと思っていました。 会社帰りに東京の立川駅界隈を歩いてみることにしました。看板やショーウィンドウのデザイン、そこかしこにあるポスター、無料フライヤー、行きかう人々のファッションに持ち物、直接関係があるとは思えないものの、何かクリスタル製品につながるヒントがあるかもしれないと思ったからです。 立川駅北口の広場を横切った時にウサギのオブジェが目に入りました。立川市公認キャラクターの「くるりん」です。見上げるほど大きな造形物なのに、足を止めて見る人はいません。自分だって数えきれないくらい、このオブジェの前を通り過ぎたのに、まじまじと見たのは初めてだったので、そんなものなのでしょう。抽象化されたウサギ、頬っぺには蚊取り線香のようなピンク色の渦巻があり、後ろにまわると尻尾が花と化しています。あとで調べたところによると、立川市の花のコブシを模しているとのことでした。 「ゆるキャラならたくさんいるから、ご当地キャラクターをクリスタルの置き物にするというサービスはどうだろうか」。ただ、クリスタルで作るとなると、細部を再現するのが難しいかもしれないと、すぐに思い直しました。それに、そもそもご当地キャラはグッズ展開が豊富なので、すでに、ぬいぐるみ、缶バッジ、キーホルダーなどありとあらゆるグッズになっているだろう。そんなところに入り込む余地があるだろうか? ご当地キャラクターのクリスタル化はないなと思い直し、もっとクリスタル製品に馴染みやすいデザインとなるとと、考えを巡らしました。 「社長って自分の会社が好きなんだよね」 引っかかっていた社長の言葉がリフレインします。少なくとも社長の数だけ、会社を好きな人がいると考えると、会社をクリスタルにするという発想もいいかもしれないなと思いました。会社といっても、実像があるわけではないので、さらに考えを進めた先に「社名」や「ロゴマーク」が浮かびました。今僕がいる会社には、バッジ製作を請け負う部署もあって、僕自身も企業ロゴには慣れ親しんでいます。それにもともと、有名どころでいえば「FedEx」のロゴの矢印(→)のようなギミックの利いたロゴデザインが好きなこともあって、ロゴにまつわる商品をつくってみたいと思い始めました。   ■「社長の想い」が込められた自社ロゴ 新商品企画のことを詰めたいところでしたが、ひとまず同時並行で走らせている急ぎの企画に取り掛かっていた時に、社長室に呼ばれました。企画・デザイン部署は社長直轄ということもあって、僕は社長と直接やりとりする機会が他の社員よりも多くあります。社長から声がかかることも多いので、今回も急ぎの案件のことだろうと、さほど構えずに社長室に向かいました。が、社長の言葉に息をのみました。 「新商品企画って進んでる?」 「えっ、ああ、はい、まあ、その……」としどろもどろになりながら、「企業ロゴをクリスタルにしたらいいかもしれないと思っています」と、まだ思いついただけの案を口走っていました。 「いいね、それ! わかりやすくまとめてくれる?」 「あっはい、わかりました」 これで、もう後に引けなくなりました。なんとか形にしなければと焦りながら次の一声を待っていると、思いがけず社長のロゴへの想いを聞くことになったのです。 アワードライフ運営元である立川徽章のロゴは、数年前に創業当時のものから変更されたのですが、そのことに触れて「大きな決断だったんだよね」と社長は口を開きました。先代からバトンを受け継ぎ走り出してから、世界的な不況のあおりを受けるなど、経営には苦しい時が多々あったそうです。しかし、アナログからデジタルへの移行を敢行し、取り扱っていたバッジや表彰品などの専門店サイトを立ち上げることで、活路を見出してここまで来たと言います。 そして、経営が軌道に乗ってきて、これからを見据えた時にロゴを一新したいという気持ちが沸き上がってきたんだそうです。新しくなった立川徽章のロゴは、徽章屋として大切にしている表彰文化の「心・魂」を日本の象徴である「日の丸」に重ね合わせて、「人の手」と「トロフィー」がやさしく包み込むデザインになっています。重なり、だんだんと大きくなるカップに、表彰文化を日本中へ、そして世界へと広めていきたいという熱い想いを込めて、カラーの赤は情熱を表したとのことでした。 先代社長と現在の専務とが創業当時から使用しているロゴを変更するわけですから葛藤もあったのだと推察しますが、それほど社長としての想いや理念をロゴマークに込めたかったのだと知りました。きっと、世の中にあるロゴも、同じようにそれぞれの想いが込められているのだと改めて思いました。 ■ロゴマークはクリスタルと相性がいい 改めて考えてみると、ロゴマークは企業のものだけでなく、新商品や新サービスなどの「顔」としても活躍していることに気づきました。調べてみると、ロゴマークには社名や商品名を認知させるだけなく、企業理念を浸透させたり、企業や商品への信頼性、存在価値を高めたりといったブランディング戦略の役割もあるそうです。ロゴマークをクリスタルにするサービスはいけるかもしれないという気持ちがいよいよ強くなってきました。 クリスタル製品なら、見映えがよくインテリア小物として扱いやすく、名入れもできるので記念品的な要素を強く持たせることができます。「贈る」という行為でスポットライトを浴び、次に「置物」として飾られている限り多くの人々の目に触れるものになるというメリットがあるのです。ロゴマークという「顔」をPRするという視点からも、クリスタルとは非常に相性がいいに違いありません。 ただ、企画書としてまとめる際に苦労したのは、ロゴマークの形をクリスタルにどう落とし込むかです。社章の校正に携わりさまざまなロゴマークデータを取り扱った経験から、ロゴマークのガイドライン(利用規約)が厳しいことを知っていました。クリスタルでは細かな形状を表現できないからといって、ガイドラインにあるロゴマークを改変してしまうことは許されません。そこで外形はざっくりロゴマークをかたどり、実際のロゴマークをレーザー彫刻か、UV印刷で表現するデザインにすることにしました。これならガイドラインに抵触せずに忠実にロゴマークを再現し、クリスタルにできます。「御社のロゴマークをクリスタルにします!社長やオーナーへのサプライズプレゼントにも!」と言ったキャッチコピーで、次の新商品会議用の資料をまとめました。   ■社長だけがこの商品のターゲットなの? 「ロゴマークという発想はいいと思ったけれど……」 との意見に、詰めが甘かったかとの想いがよぎりました。頭の中が真っ白になりかけながらも、「トップである社長の想いが込められているロゴマークをクリスタルにすると言っても、ターゲットが社長やオーナーというのは違うような気がする」という指摘はメモしておきました。 考えてみると、ロゴマークには企業の経営理念や社長の想いが表されているといっても、社長やオーナーがターゲットというのは安直すぎたかもしれないと反省しました。ロゴマークに込められた思いをカタチにして贈りたい相手は、お客様というのもあるかもしれないし……その時、ハッと思いつきました。自分たちスタッフを忘れていました。企業理念や会社としての想いをカタチにして共感を得ることで、会社で働く人たちの帰属意識を高めるものとして使えないでしょうか。 「帰属意識」についてもう少し調べてみました。特定の組織や集団に属しているという「意識」のことを指し、社員のなかに芽生える「集団に所属している」「仲間である」といった考え方のことを言うそうです。つまり、帰属意識が高いほど組織の問題を自分のこととして捉えたり、会社や従業員に対して興味や愛着を持ったりすることにつながるわけです。会社の象徴でもあるロゴマークを共有することは、会社への意識を高める助けになるかもしれません。また、そこで働くスタッフだけに限らず、それを支えるグループ会社、パートナー企業の人にも同じことが言えそうです。 これまでは、クリスタル製ロゴマークの使用場面を考えたとき「社長室・会社のエントランス」に置くぐらいしか思い浮かんでいませんでした。しかし、「ノベルティ」「認定証」としても使えるかもしれないことに気づきました。実際、この分野であれば、表彰品・記念品を取り扱っている会社としてのノウハウがあります。 複数個での受注という可能性も出てきそうです。パックで請け負ってもいいかもしれないと思い、ターゲットを幅広く設定し、ミニサイズの複数個パックをラインナップに加える案で再提案することにしました。 「この感じでいってみようか」 クリスタル製ロゴマーク企画へのゴーサインが出て、胸をなでおろしました。しかし、企画が通って安心したのも束の間です。今度は商品化に向けて各部署への調整が始まりました。商品の流れをざっくり言うと、注文をカスタマー・営業で受け、校正チームがデザインデータを作成し、クリスタル製作工場で製作していきます。商品化されれば、実際にかかわるのは各部署です。商品企画がざっくり立ち上がったあたりから、各部署の意見を募るという方法を弊社ではとっているのです。   ■「セミオーダー」で作る自社ロゴクリスタル 「かたどりはどの程度ロゴマークの形を活かすべきでしょうか?」 デザインデータづくりを担当する校正から心配の声が上がりました。できるだけロゴマークの形を反映しつつ、クリスタルで製作可能なデザインに落とし込むかたどりは、確かに気をつかう部分です。これについては、主に尖っているところ(凸も凹みも)は表現が難しい部分なので丸味をつけるなど、いくつかの例をとってマニュアル資料を作成することにしました。それに、この「ロゴマークをかたどりする」という工程には、これまで積み重ねてきた「社章・バッジ」製作のノウハウとして蓄積されている部分で得意分野です。 これまでフルオーダーでオリジナルクリスタルを製作するとなると高額になりがちでした。しかし、今回の商品は、大きさや厚みといったサイズを予め決めておいて、ロゴマークをかたどるセミオーダーにしたため、製作期間の短縮につながり、コストを抑えることに成功しました。 高品質な光学ガラスを使用した商品は、お贈りする品としてもふさわしい高級感のある仕上がりです。きっと、贈り先で末永い輝きと存在感を放つに違いありません。想い入れのあるそれぞれのロゴを、クリスタルという永遠の輝きに昇華させられる商品ができたことを嬉しく思います。ぜひ、あなたのロゴマークをクリスタルにしてみませんか?...

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オリジナルクリスタルの製作のアワードライフで、クリスタル位牌の製作・販売を行うことになりました。なぜ、企業様向けに、オリジナルクリスタル製品を作っている我々アワードライフがお位牌の製作にいたったのか。それには、アワードライフ誕生から今に至るまでの歴史と、スタッフの思いがありました。 あらためまして、オリジナルクリスタル製作のご相談から、実際の生産まで引き受けるアワードライフのスタッフCです。アワードライフではオリジナルのクリスタルガラス製品の製作を引き受けていますが、ブランドのスタートは、クリスタルトロフィーの企画・製作です(アワードライフのトロフィーは「トロフィー生活」で購入できますよ!)。 そういう訳で、もともとクリスタルトロフィーのブランドだったので、自ブランド製品の作成は得意です。それもあって他のクリスタルガラス製作を行っている会社さんとは、少し違った立場から製作にアドバイスもできるのでご好評いただいています。 ではなぜ、オリジナルのクリスタル位牌をつくろう! となったのでしょうか。   ある日の会議「新しいクリスタル製品、なんかない?」 私たちはクリスタルの表彰品という、美観のほかに、表彰のための文章や図案を入れることを前提とした製品を得意としています。 そこで、事業の責任者でもある社長から、 「新しいクリスタル製品のアイディア、なんかない?」 という質問が参加者に投げかけられました。唐突だったので、おそらくみんな頭の中に「?」を思い浮かべたと思います。もしかしたら、スタッフCだけかもしれませんが……。新しいクリスタルの表彰品ではないのでしょうか? まあ、会議においてまず結論から、大きな議題から投げかけられるのはよくある話です。もう少し話を聞いて見ます。まだ慌てるような時間ではないので、じっくりやっていきましょう。 質問をしたり、逆にされたりしながらまとめていくと、アワードライフブランドを拡張するために……というよりは、多面的なカットを小ロットから作成できる私たちのマニュファクチャとしての能力を、もっと世の中の役に立てられないだろうか? いろいろな人に知ってもらって、「実はやりたかったけど、できるところがなかった!」という方たちの役に立ちたい! ということでした。 確かに、クリスタルガラスのキラキラとした輝きをいろいろな人に届けられたらとても素敵なことです。 「そうは言っても、思いつかないよなぁ」 思いつかないというとちょっと違いますが、「アワードライフってこんなブランドですよ!」ということが伝わる商品というと難しく、スタッフCはアイディアを出せずにいました。   亡くなった人を偲ぶメモリアル そんなある日のことです。スタッフCは私用でアワードライフの地元、立川の駅周辺を歩いていました。立川駅は、駅周辺が再開発され、特に歩道が立体化した北口デッキ周辺は大きなビルが集中して立ち並んでいます。とはいっても、少し歩いて、立体歩道から降りると昔ながら会社さん、商店が多くあります。 騒がしい町がそれほど好きではないので、その日、スタッフCはそんな昔ながらの商店が建ち並ぶ界隈をブラブラしていました。そこで目に入ったのが、メモリアルホールのポスターでした。 「そういえば、じいちゃんばあちゃんの命日そろそろだなぁ」 ふっとそんなことを思い出します。スタッフCは祖母、祖父を続けて亡くしていました。幸いにも、ふたりともそれほど苦しまずに亡くなったと聞いています。スタッフCはもちろん東京に住み、祖父母は東北に住んでいたので、亡くなるまでに会いに行くこともできなかったのです。もちろん、亡くなって数年経っても、なかなかお墓参りにもいけません。 「仏壇もないし、手をあわせる先もないからな」 なんて考えます。 実際、東京に住んでいる方で仏壇があるお家に住んでいる方は多くはないのでしょうか? スタッフCの父は、遺影として写真を飾り命日にはお酒をおそなえしていましたが、もっと故人を偲びたいと思っていても、できてそのくらいという事情があると思います。 そんなことを考えながらポスターを見ていると、「お位牌」の文字が目に入りました。スタッフCは、お位牌については名前は知っていましたが、どんな用途で、どんな意味があるかは知りません。 そこで用をすませて帰りの電車の中で、さっそくお位牌について調べてみました。 [box class="blue_box" title="お位牌について"] 仏壇に置かれている、文字の書かれた札や木製の牌が「お位牌」だそうです。書かれている文字は、戒名です。 お仏壇が寺院の本堂を意味していて、お位牌は本尊を意味しているそうです。お位牌を故人の依代や礼拝の対象としてお祭りする、というのが仏壇と位牌の基本的な姿のようです。 ※スタッフC調べ。宗派や地方などによって違いがあると思います。 [/box] お仏壇に置くものであれば、東京で縁がないのも仕方がないと思う一方で、戒名であれば……、とスタッフCはまだ記憶に新しい祖父母のお葬式を思い出しました。   祖父母の思い出とお葬式 お葬式は宗派によって異なるのはもちろん、地方によっても異なるようです。 スタッフCは喪主ではなく、訃報があってもすぐにかけつけることができない距離だったので、一部しか分かりません。ただ、葬儀の開始前に、とにかくひっきりなしに弔問客がやってきて、血縁者と長い時間話し込む(そのための席も用意されている)というのが特徴だと聞きました。 地方のお葬式は大体こんな感じなのか、親族のいうように少し変わっているのかは分かりません。宗派は曹洞宗だったのですが、宗派によらずそういった席が用意されているので、おそらくは地域性なのだと思います。 本番のお葬式がはじまると、しばらくは通常通りの葬儀が行われます。お焼香をしたり……といったことですね。 ただ、もうひとつ少し変わった習慣があります。それは、お葬式が終わる前には、一番若い(幼い)子どもにも役割があるということです。どんな役割かというと…… 故人との思い出や感謝のお手紙を書いて読む役割があります。これをお焼香の後にやるのが決まりでした。スタッフCの場合には、甥っ子姪っ子がそれを担当していました。 甥っ子と姪っ子は、祖父と一緒に暮らしていたので(祖母は晩年、近所の介護施設にいました)、つい最近までの思い出の話をしてくれました。 一方でスタッフCはというと、子どものころはよく両親に連れられて祖父母に会いにいっていたものの、大人になるとさっぱりでした。とくに、会いに行こうかな……と思っても、そうそう会いにいけない事情もありました。 そんな身近に暮らしていた子どもたちの話が終わると、故人の戒名と、その由来・説法をお坊さんがしてくれました。 スタッフCがびっくりしたのは、後に亡くなった祖父の戒名の由来でした。 祖父の戒名に一部に使われたのは「自然(じねん、と読みます)」。由来は、若い頃は鉱山で働き、その後原野を開墾したことからつけられました。 若い頃は鉱山で働いていたことや、開墾して今の土地に移り住んだことはスタッフCもなんとなく知っていました。ただ、それは思っていたよりもずっと凄いことだったのです。   祖父が遺した偉大な足跡 幼少の頃から東京で育っていたスタッフCからすると、祖父母の住む母方の実家に帰るのは一大旅行でした。実際、東北の港町は、新幹線が内陸を走っていることもあり、実際の距離よりも行きづらいです。 旅の締めくくりは、映画に出てくるようなくねくねした上り坂と、少し大きな病院が建つ横を走る砂利道でした。父や親戚の運転する車、あるいはタクシーで眠ってしまっていても、砂利道に入ると「着いたな」と分かるくらい、特徴的な道だったことを今も覚えています。 ニュースで気仙沼の映像を見たことがある方は、港町の印象が強いと思います。しかし、日本特有の海岸線で、祖父母の住んでいた家は、小さい山の上にありました。畑も持っていたのですが、正直なところ、子ども心にも耕作に向いた土地ではないと思いました。そこで、あるとき祖母に聞いたことがあります。 「なんでこんな畑もしづらそうなところに住んでるの?」 田舎といっても、もっと住みやすそうなところは沢山あったからです。 「ここはじいさんが耕したとこだからなぁ」 と言って祖母は笑っていました。その時は土地を買って、家の辺りを頑張って平らにしたんだな……くらいに思っていました。 ところが、そんな程度ではありませんでした。 お葬式で語られたところによると、祖父が開拓したのは原野とはいえ、野ではなく山でした。そのため、木の根はしっかりとはり、大きな岩なども多くあったといいます。それを、重機もないような時代に人の手でこつこつと開墾していきました。 それは、祖父母が住んでいた家や畑ではなく、その山の一帯で、遠縁の親戚も固まって住んでいました。なぜかというと、全て祖父が開墾したからです。 それから時が経って2011年。東日本大震災が起こり祖父母の住んでいた気仙沼は津波による甚大な被害を受けましたが、幸いなことにスタッフCの親族は、遠縁も含めて皆、無事でした。なぜなら、祖父が開いた元はとても人が住むには向かない山の土地に住んでいたため、津波の被害が届かなかったからです。 また、現在ではその地盤がしっかりしていて、津波の届かない山には親族だけではなく多くの人が移り住み、大きな建物も建ちました。 お葬式の前に行ったときも、すでにスタッフCの知っているのどかな景色ではなくなっていました。ただ、それを悲しく思う親族はたぶん、一人もいないでしょう。復興のため、気仙沼の人のために、祖父の土地が、今、何十年も経ってあらためて人の役に立っているからです。 そんな、偉大な祖父の足跡が戒名に使われた「自然」の2文字には込められていました。   祖母がいて、支えたからこその功労 祖父のその戒名を聞いて、スタッフCは葬儀の後、伯母、叔父に祖母の戒名や思い出について話を聞くことにしました。 「じいちゃんは、まあ、あんな人だったからナァ」 と長男である叔父(今も役場で復興の仕事をしています)は苦笑いを浮かべながら話してくれました。 大酒飲みで、タバコも沢山吸う。若い頃は鉱山(たしか、炭坑だったといいます)で働いていたので長生きできたのが不思議と言われてしまう祖父は、先に書いた通り若い頃は働き者で立派だったのですが、そんな生活だったので近い親族からはあまり評判がよくなかったです。スタッフCの記憶にあるのは、なによりタバコ、「わかば」の臭いです。 昔気質な祖父は、それほど人付き合いが得意ではなかったようです。孫には優しかったので、イメージが湧かないですが、いわゆる「頑固なおじいちゃん」だったと言います。とはいえ、若い頃からなので、親類からすると気難しい人ですね。 そんな気難しい祖父を支えたのが祖母でした。 祖父は重機がない中、土地を拓きましたが、祖母は祖父の農業には向かない土地を一人でせっせと耕して野菜や米を作ったと言います。詳しくは聞けませんでしたが、土地があるだけではもちろんお金にもなりませんし、買い物にいくのも一苦労の場所でした。ですから、一人でやる農業は今と比べものにならないほど大変なことだったようです。 それでも祖母は祖父を支えながら、そして近所に越してきた親族や近所の人と交流をしました。農業だけでなく、いろいろなところで助けあって暮らしていたということです。土地の開拓、農業に限らず、ほとんどすべてのことが不便だった時代、助け合わないで暮らしていくことは文字通り不可能なこと。 祖父は照れ屋だったこともあり、素直に認めることはなかなかなかったようですが、祖母の人付き合い、社交性がなければ多くの人の命を救えるほどの土地は、開墾できなかったでしょう。   お葬式で初めて知る故人の功績と思い出 スタッフCに限らず、祖父母が若い頃、現役時代に何をしていたのかということを知らない人は多いと思います。また、対象も祖父母に限らず、親戚のおじさんやおばさん、または古くから付き合いのある近所の人。 みんな苦労して生きてきたので、家族には当たり前でとくに誰かに伝えようとはしない、「すごいこと」をしていると思います。 また、悲しいことに「おじいちゃん、おばあちゃん」と呼ばれるような年になる前に、大人になる前に亡くなってしまう子どもたちにも、その人生いっぱいに詰まった思い出があります。 戒名にそのすべてが入りきるとは、スタッフCは思いませんでしたが、その戒名が話題に上るようなものがあれば人に知られていない功績や思い出を、改めてよみがえらせるお手伝いができるのではないでしょうか? そう考えたスタッフCは、戒名を記すお位牌を新商品として提案することを決めます。とくに、伝統的なお位牌とはケンカをしない、お仏壇のないアパートやマンションでも故人を偲べるような新しい位牌にしようと決めました。 思い出をもって臨んだ会議、結果は? スタッフCはそれなりに……いえ、結構な自信をもって位牌トロフィーの提案に臨みました。自分でなんとなく、位牌っぽいラフスケッチを作成もしました。 しかしながら……最初に会議で発表したときの反応はイマイチでした。 後から思い返してみたら、自分ひとりで盛り上がってしまっているので、なぜ位牌でなければいけないのか、戒名を書くということがどういうことなのか……そんな視点が抜けてしまっていました。 大事なのは、みんなが故人を偲ぶということが、どれだけ今の私たちを支えてくれているかということを感じ取れることでした。ただ、クリスタルで形を真似しても、そんな気持ちを真似することはできなかったのですね。 それに、もともとある商品を、しかも伝統のある商品を後追いで作って意味があるの? オリジナルクリスタルを作れるというアピールとして正しいの? もっともな意見でした。   Award Lifeのクリスタル製品 そもそもアワードライフのオリジナルクリスタルの特徴はなんだったでしょうか。ただ小ロットでオリジナルのクリスタルガラスを作成できるというだけではありません。 もともと、トロフィーを仕入れて販売していた小売・卸売の会社が、自社でオリジナルのクリスタルトロフィーを企画、作成することを目的にスタートしています。そのため、自分たちで作ったクリスタルの商品を販売することでお客様と打ち合わせやデザインの調整を行うという、ただのメーカーにはないデザイン力、企画力があります。 さらに、同じく歴史ある日本のトロフィーの中でも比較的新しい、クリスタルのトロフィーに美しい彫刻やダイレクトにカラープリントする技術など、ただクリスタルガラスの形状を整えるだけではないノウハウがあります。 つまり、クリスタルガラスの形状に加え、高いレベルの表面加工、装飾をワンストップで施せるからこそ、トロフィーというハレの日に使う賞品を世に送り出せています。 これこそが、Award Lifeのクリスタル製品をお客様に選んでいただいている理由でした。   クリスタルトロフィーで培ったノウハウをもう一度 あらためて、Award Lifeのオリジナルクリスタル製品でなにができるか? と考えたスタッフCは、まだオリジナルのクリスタル位牌の製作を諦めていませんでした。 とはいえ、諦めていなくても、アワードライフのオリジナルクリスタルについて考えてみても、自分の位牌に対して考えている思いを、皆さんの思い出を形に残すだけの製品を形にする力はないな……と考えました。 そこで、本当ならある程度企画が認められてからやるべきだったのですが……先にクリスタルトロフィーのデザインを手がけてきた社員・部署に声をかけることにしました。アイディア自体が全然だめなら、まあ、断られるだろうしそんなひどいことにはならないだろう、なんて勝手なことを考えていた気がします。 なお、アワードライフでトロフィーのデザインをしているデザイナーは、立体のデザインだけでなく、もともとはトロフィーや楯に、表彰文を美しくレイアウトして皆さんの思いを伝える仕事も長くしていました。 そのため、置物としてのカタチだけではなく、刻まれる皆さんの気持ちのこめられた文章を美しく演出することも考えてデザインしています。ぱっと見ると、お祝いと戒名では真逆のような気もします。 しかし、お葬式や戒名は悲しい気持ちだけではなく、その功労を称える気持ちがこめられていますから、全然違うということはない、むしろアワードライフでトロフィーをデザインしていた経験が生きるはずだ、とスタッフCは考えたのです。 果たして、話を聞いたデザイナーは、名前や戒名だけではなく、いろいろなメッセージや写真まで入れられる広い面を持ち、偉勲を称えるためにトロフィーのイメージを位牌にこめてデザインを描きだしました。   担当したデザイナーの思い 今回、トロフィーを作り、オリジナルクリスタル製作のお手伝いをしていたブランドが、どういう経緯でクリスタルの位牌を作ることになったのか……ということを記すにあたってデザイナーにも話を聞いてみました。 今までとは全然違う製品のデザインだったので、きっとびっくりされたと思います。ですので、話を聞いての第一声が、「位牌トロフィーって、売れるのかな? と思いました」と、大変にお仕事として、スタッフCなんかよりずっと現実的な感想だったようです。 とはいえ、しきり直して、デザインを考え、手を動かすうちに、都会の1人暮らしの方、派手に見える夜のお仕事の方々も、ふと亡くなった親しい人を思う時間って、自分と同じようにみんなあるんだろうな、と思ったそうです。夜のお仕事の方々というのは、弊社の支店が新宿にあり、お客様としてよくご注文を下さるためにそう考えたそうです。 仏壇がなくても、忙しい中で、ちょっとした祈りの時間をもち、日々を生きる人の支えになるような気負いのない位牌トロフィー、あって欲しいな。そう思えた途端、有り難さと畏れ多さを感じ、震えたそうです。一方で、お願いしたデザイナーさん自身母を亡くしているので、以前より位牌を身近に感じることに老いを感じ、戸惑ったそうです。 スタッフCはデザイナーさんの境遇は知らなかったのですが、そんな事情もあって最初の、プロトタイプのデザインから「位牌」について感じて、考え抜いたものを作り出すことができました。 お位牌にとどまらない、お位牌トロフィーとして再定義することによって、アワードライフのトロフィーと同じように、名前や戒名だけではない、いろいろなメッセージを入れられる広い面を持たせました。そして、トロフィーのイメージをあわせることで、供養や祈りに加えて、故人を称えようという願いが込められました。   そして、最初はやはり戸惑いながらも、弊社デザイナーが形にしたデザインを持って、スタッフCはもう一度提案に臨みました。 メモリアルをデザインしてカタチにするということ。 初期案をもって、スタッフCは再度提案に向かいます。同じようで、今回は前回と異なります。プロトタイプとはいえクオリティの高い、デザイナーさんが作ったデザインがあるというだけではありません。ただのクリスタルのお位牌ではない、アワードライフだからできる、お位牌トロフィーという新しい価値があるからです。 作成されたデザインは、その最初期の段階から、多面カットで、光り輝くプリズムをイメージしています。 デザイナーさんは、スタッフCがとりとめもなく伝えた、故人の遺した偉大な業績や、それによって故人だけでなく、遺された人たちにも与えられた輝くような笑顔や、その暖かさをイメージしてデザインを作ってくれました。 もちろん、先に書いた通り、デザイナーさん個人の思いも込められています。 さらに、お位牌ではなく、お位牌トロフィーと再定義したことで広く名入れできる面が用意されました。これで人生がぎゅっと凝縮された戒名だけではなく、個人のエピソードを短いながらも、わかりやすい言葉で入れる余地も残しました。アワードライフの加工班であれば、写真や思い出のかたちを入れることもできるでしょう。 故人の最後の思い出というだけではなく、日常でふとしたときに故人を思い出してもらう。そのときに生き生きと、生きていたときのこと、輝かしい功績を誰かに伝えたくなる、そういう位牌トロフィーを目指すことが決まりました。   さらなるブラッシュアップ アワードライフの新しい「顔」のひとつとして製作が決まれば、デザイナー個人だけでデザインが進むわけではありません。 アワードライフには「イノベーション部」と呼ばれる新しいデザインを制作するための部署があります。そこに、正式にお仕事として指示が入ります。 そのとき、どういう感じだったか、イノベーション部の長にも話を聞いてみました。   1.位牌トロフィーのデザイン依頼が入った時 [aside type="boader"]正直戸惑いました。 というのも私の実家には仏壇がなく、位牌の存在は知っていましたが、『じいちゃんばちゃんちにあったアレかぁ・・』という感じで正直ピンとこなかったです。私にとって身近にあるものではなかったので、需要があるのかな? と、思うところもありました。[/aside] やはり、素材は一緒ですが、お位牌や戒名が故人の功績を、トロフィーのように称えるものだというような感覚は、なかなかないようです。   2.世代の違う人の意見を聞いてみて [aside type="boader"]自分の記憶では、『実家に仏壇自体なかった』と記憶していましたが、念の為に親に電話で確認してみました。 確かに実家に仏壇自体は無く、ついでに『クリスタル製の位牌ってどう思う?』と素直に聞いてみました。 私の親は、従来の仏壇や位牌に、少し暗いイメージを持っていたので、『明るくて素敵かもね』という意見が最初にもらえました。[/aside] 東京に限らず、お仏壇もお位牌もないというご家庭の方が、日本全体で増えているかもしれません。 それに、暗いイメージは寂しく思いますが、やはり亡くなった方に関するもの。みんなに幸せに、健康に生きていてほしいというのは、皆さん共通して思うところだと思います。その、悲しく暗い気持ち・イメージを明るくできたらいいですよね。 [aside type="boader"]『今は昔みたいに広い家も少ないし、和室が無い家も多い。小振りなら洋室にも合うかもね。』という意見には納得させられるところもありました。[/aside] インテリアや家の広さも、お仏壇が当たり前にあった昔と今とで、大きく違うところかもしれません。故人を偲ぶためのものを起きたくても、お仏壇は大きすぎる……というのは、現実的ですが、少し悲しくもあります。 こういったご意見もあって、お位牌トロフィーはインテリアとして置いておけるように、モダンすぎず、かといって伝統的なものにとらわれすぎないように作られています。   3.製作に取り掛かって感じたこと [aside type="boader"]『クリスタル素材であること』に意味を持たせる必要があるなと感じました。従来の木材にはない、『重み・輝き』はアピールできる点であること。また、クリスタル素材だからこそ『安定感』にも気を付ける必要がありました。 サイズに関しては、大きすぎると重くなり過ぎますし、仏壇に置くことが難しくなります。従来の位牌サイズを意識しつつ、小さくても輝きで存在感が出せれば、いい製品ができあがるという考えでサンプル作成に取り掛かりました。[/aside] インテリアとしてはもちろん、このように従来のお位牌と同じように扱えることと、素材の違いに最大限の注意が払われています。それは、アワードライフがオリジナルクリスタルの製造・製作をお手伝いするブランドだからということもあります。ただ、それだけではありません。 デザインチームが気を配った通り、クリスタルの輝きが亡くなった大切な方の思い出、存在、功績を象徴するようになっています。 忘れたくない思い出をクリスタルの輝くメモリアルで伝える このようにして、スタッフの個人的な思い出からスタートした開発が、クリスタルのメモリアルとして製品化されます。ただ、これはただ製品ができればいいというものではありません。 故人のお墓・暮らした土地から遠く離れていて、故人に会ったことがない子どもたちもいるでしょう。そんな子どもたちにも、故人がどういう人だったか、どんなにすごいことをしたり、みんなに好かれたり、皆さんから感謝されたいか。それを伝えられる形のあるメモリアルとして、皆さんの気持ちを次世代につなぐものとしてつくることができるようになりました。 以前から、離れた親戚、友達と会えないまま亡くなってしまうことがありました。それに加えて、伝染病の流行によって一度のお見舞いも許されないまま、お別れになってしまったという悲しいお話も耳にします。伝染病に限らず、災害でも、事故でも、悲しいことが多くあります。 お位牌トロフィーが、この悲しい気持ちを少しでも、「あなたがいてくれてよかった」と思い出せるきっかけとして使っていただければ、スタッフ一同、うれしく思います。   もちろん、アワードライフではお位牌はもちろんのことですが、形状からオリジナル造形のクリスタルを製造を承っています。 メモリアル、記念品に加え、インテリア、小物類など、他社よりも小ロットから製作しております。また、このように既製品もご用意がありますので、ご予算や納期からご都合があわない場合、形状は既成のものを活用し、表面加工を独自することもできます。 お気軽にお問い合わせください。...

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