「帰属意識」をカタチにしたら? から生まれた新製品
■ロゴマークはクリスタルと相性がいい
改めて考えてみると、ロゴマークは企業のものだけでなく、新商品や新サービスなどの「顔」としても活躍していることに気づきました。調べてみると、ロゴマークには社名や商品名を認知させるだけなく、企業理念を浸透させたり、企業や商品への信頼性、存在価値を高めたりといったブランディング戦略の役割もあるそうです。ロゴマークをクリスタルにするサービスはいけるかもしれないという気持ちがいよいよ強くなってきました。
クリスタル製品なら、見映えがよくインテリア小物として扱いやすく、名入れもできるので記念品的な要素を強く持たせることができます。「贈る」という行為でスポットライトを浴び、次に「置物」として飾られている限り多くの人々の目に触れるものになるというメリットがあるのです。ロゴマークという「顔」をPRするという視点からも、クリスタルとは非常に相性がいいに違いありません。
ただ、企画書としてまとめる際に苦労したのは、ロゴマークの形をクリスタルにどう落とし込むかです。社章の校正に携わりさまざまなロゴマークデータを取り扱った経験から、ロゴマークのガイドライン(利用規約)が厳しいことを知っていました。クリスタルでは細かな形状を表現できないからといって、ガイドラインにあるロゴマークを改変してしまうことは許されません。そこで外形はざっくりロゴマークをかたどり、実際のロゴマークをレーザー彫刻か、UV印刷で表現するデザインにすることにしました。これならガイドラインに抵触せずに忠実にロゴマークを再現し、クリスタルにできます。「御社のロゴマークをクリスタルにします!社長やオーナーへのサプライズプレゼントにも!」と言ったキャッチコピーで、次の新商品会議用の資料をまとめました。
■社長だけがこの商品のターゲットなの?
「ロゴマークという発想はいいと思ったけれど……」
との意見に、詰めが甘かったかとの想いがよぎりました。頭の中が真っ白になりかけながらも、「トップである社長の想いが込められているロゴマークをクリスタルにすると言っても、ターゲットが社長やオーナーというのは違うような気がする」という指摘はメモしておきました。
考えてみると、ロゴマークには企業の経営理念や社長の想いが表されているといっても、社長やオーナーがターゲットというのは安直すぎたかもしれないと反省しました。ロゴマークに込められた思いをカタチにして贈りたい相手は、お客様というのもあるかもしれないし……その時、ハッと思いつきました。自分たちスタッフを忘れていました。企業理念や会社としての想いをカタチにして共感を得ることで、会社で働く人たちの帰属意識を高めるものとして使えないでしょうか。
「帰属意識」についてもう少し調べてみました。特定の組織や集団に属しているという「意識」のことを指し、社員のなかに芽生える「集団に所属している」「仲間である」といった考え方のことを言うそうです。つまり、帰属意識が高いほど組織の問題を自分のこととして捉えたり、会社や従業員に対して興味や愛着を持ったりすることにつながるわけです。会社の象徴でもあるロゴマークを共有することは、会社への意識を高める助けになるかもしれません。また、そこで働くスタッフだけに限らず、それを支えるグループ会社、パートナー企業の人にも同じことが言えそうです。
これまでは、クリスタル製ロゴマークの使用場面を考えたとき「社長室・会社のエントランス」に置くぐらいしか思い浮かんでいませんでした。しかし、「ノベルティ」「認定証」としても使えるかもしれないことに気づきました。実際、この分野であれば、表彰品・記念品を取り扱っている会社としてのノウハウがあります。
複数個での受注という可能性も出てきそうです。パックで請け負ってもいいかもしれないと思い、ターゲットを幅広く設定し、ミニサイズの複数個パックをラインナップに加える案で再提案することにしました。
「この感じでいってみようか」
クリスタル製ロゴマーク企画へのゴーサインが出て、胸をなでおろしました。しかし、企画が通って安心したのも束の間です。今度は商品化に向けて各部署への調整が始まりました。商品の流れをざっくり言うと、注文をカスタマー・営業で受け、校正チームがデザインデータを作成し、クリスタル製作工場で製作していきます。商品化されれば、実際にかかわるのは各部署です。商品企画がざっくり立ち上がったあたりから、各部署の意見を募るという方法を弊社ではとっているのです。
■「セミオーダー」で作る自社ロゴクリスタル
「かたどりはどの程度ロゴマークの形を活かすべきでしょうか?」
デザインデータづくりを担当する校正から心配の声が上がりました。できるだけロゴマークの形を反映しつつ、クリスタルで製作可能なデザインに落とし込むかたどりは、確かに気をつかう部分です。これについては、主に尖っているところ(凸も凹みも)は表現が難しい部分なので丸味をつけるなど、いくつかの例をとってマニュアル資料を作成することにしました。それに、この「ロゴマークをかたどりする」という工程には、これまで積み重ねてきた「社章・バッジ」製作のノウハウとして蓄積されている部分で得意分野です。
これまでフルオーダーでオリジナルクリスタルを製作するとなると高額になりがちでした。しかし、今回の商品は、大きさや厚みといったサイズを予め決めておいて、ロゴマークをかたどるセミオーダーにしたため、製作期間の短縮につながり、コストを抑えることに成功しました。
高品質な光学ガラスを使用した商品は、お贈りする品としてもふさわしい高級感のある仕上がりです。きっと、贈り先で末永い輝きと存在感を放つに違いありません。想い入れのあるそれぞれのロゴを、クリスタルという永遠の輝きに昇華させられる商品ができたことを嬉しく思います。ぜひ、あなたのロゴマークをクリスタルにしてみませんか?